福祉用具貸与 レンタル価格情報開示時代突入
| 福祉用具貸与 レンタル価格情報開示時代突入 必要な「サービスの質」確保 |
| 公的制度でありながら上限設定のない自由価格制の介護保険福祉用具サービス分野で、いよいよレンタル価格に関する情報が利用者に開示される。08年12月に介護給付費分科会で示されたレンタル価格情報開示を実行に移す国保連中央会のシステム構築が完了。早ければ10月頃より順次全国市町村からレンタル利用者に送付される給付通知書の中で利用中の福祉用具に関するレンタル価格実態が示される。比較的規模の大きい保険者も独自のシステム開発を進めている段階。今回の価格情報開示で「より良いサービスをより安く」という市場の価格調整機能が促進される一方で、介護保険制度が事業者等に課せる諸サービスの確保(コンプライアンス)やサービスの質の向上という命題もクローズアップされそうだ。介護保険の福祉用具レンタルの自由価格制そのものが正念場を迎えたともいえる。 価格情報開示は、国保連中央会の介護給付適正化システムが見直され、8月31日から福祉用具レンタル給付に関する「給付実績を活用した情報提供及び介護給付費通知」が可能となり、基本プログラムが都道府県国保連へ送付されるようになり実現した。国保連でプログラムのインストール作業などを行い、国保連に介護給付費通知業務を委託している市町村は、早ければ10月中にも利用者宅へレンタル価格を通知することになる。 介護給付費通知は07年10月時点で約半数にあたる867保険者が実施。このうち415保険者は独自のシステムを用い、残りは国保連に業務委託(データ提供のみ114保険者、通知書作成335保険者、通知書発送まで2保険者)している。国は10年度中に全保険者での介護給付費通知の実施をめざしている。 今回のシステムの見直しは、介護給付費通知に価格情報が記載し、消費者自らの事業者選択を促すことでレンタル価格の適正化を図るねらいがある。独自システムを開発中の福岡市や横浜市なども、国保連中央会から取得した給付データを独自に分析し給付通知できるように作業を進めている。 新たに開示される項目は、利用中の各レンタル機種の希望小売価格と、全国・当該都道府県・当該市町村(保険者)ごとの最頻価格・最高価格・最低価格・平均価格。それらが表と、ヒストグラム(価格分布帯による棒グラフ表示)で提供され、ヒストグラム中に、利用者のレンタル価格が赤色の菱形で表示される。利用者はこの価格情報によって現在のレンタル価格の「高い安い」が具体的な金額で、しかも感覚的に判別できるようになる。 今回のシステム変更に伴い、国は都道府県に対し「価格等に関して行政指導を行う場合は、独禁法との関係に十分留意する必要がある」と注意を喚起。事務連絡で公正取引委員会「行政指導に関する独占禁止法の考え方」(94年6月30日)を添付し、「事業者の参入・退出、商品又は役務の価格、数量、設備等に直接・間接に影響を及ぼすような行政指導は、その目的、内容、方法等によっては、公正かつ自由な競争を制限し、又は阻害するとともに、独禁法違反行為を誘発する場合さえある」と独禁法に抵触しないよう慎重な対応を求めている。 今回、価格情報が開示されるレンタル製品はTAISコード(テクノエイド協会が管理運営する福祉用具コード)のある用具に限定されおり、およそ半分のレンタル製品がTAISコードで給付請求されている。TAISコードによる請求が半数に留まっているのは、同コードの取得がメーカーに義務づけられていないことや、事業者が請求にあたってJANコードや自社商品コードを使うことも許されていることなどの理由がある。 価格情報開示に対してレンタル事業者などにはサービスの質確保が難しくなるといった懸念が少なくない。全国福祉用具専門相談員協会の山下一平会長は、8月7日の「福祉用具における保険給付の在り方に関する検討会」の席上、「サービスの違いが分かるような価格開示にすべき」と主張。これに対して厚労省老健局土生栄二振興課長は、介護給付費通知書のひな形には、「費用額(レンタル価格)には、搬入搬出費、メンテナンス費等のサービス費用が含まれている場合もある」との表示を入れたことで対応を図ったと回答した。日本介護支援専門員協会木村隆次会長は、「突然利用者の元に通知が行くと混乱が起きかねない。事前にケアマネジャーに開示される価格情報が分かるようにしてほしい」と国に要望している。 さらに今回の開示が、レンタル制度に関わる「一物一価」問題をより複雑にするとの指摘もある。レンタル品は、新品と同様の機能があることを前提に、新品か否かを問わずに、同一事業所では同一価格が原則。利用者によって価格が異なることは平等に反するという考えからで、国は「一物一価」を支持。この「一物一価」の原則を貫くと、価格開示が要因となってレンタル価格を引き下げた場合、同一品を利用する同一事業所の全利用者のレンタル価格も引き下げなければならなくなる。しかも事業所や市町村によっては、この原則を徹底していないケースもあり、価格に関する混乱にますます拍車をかけかねいとの懸念だ。 シルバーサービス振興会の調査では、価格情報開示は事業拡大のチャンスと捉える事業者は約2割。すでに大手事業者の一部には、レンタル価格の引下げや最新の新JIS対応ベッドを従来機種よりも安価に提供するなど、価格開示を見据えた動きが表れている。 一方9月1日には消費者庁が創設され「重大製品事故情報」は消費者庁に移管され、福祉用具の安全安心な利用についての社会的要請が、さらに一段と高まる様相を見せている。「国は個別援助計画策定やモニタリング実施のコスト補填、福祉用具専門相談員のスキルアップ研修の義務化など、サービスの質の確保に向けた諸施策を併せて検討する必要がある」と専門家が指摘するように、価格のみにとらわれずに安全安心を担保する体制作りが同時に求められよう。 |
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情報提供:平成21年9月10日発行 シルバー産業新聞