職能5団体の主張
日本医師会 三上裕司常任理事 政党に対しては是々非々でのぞむ 医療と介護で一番の問題は小泉政権下で長く続けられた医療費や社会保障費の削減で、医療難民や介護難民が生じた。そうした聖域と呼べる社会保障の国の役割を重視し、大きな政府で行うというのが民主党の姿勢であり期待している。 (日本医師会の代表がはずされた)中医協委員の選出は「医師を代表する委員を選ぶ」となっている。日本医師会は唯一医師全体の意見を形の上で集約できる団体。県医師会の先生を選出すると、その県の会員の意見は反映されるかもしれないが、他の県の医師会の意見は必ずしも集約されたとはいえないだろう。新委員はいずれも医師会員と民主党は説明するが、医師会員なら誰でもよいというのは乱暴な話だろう。 政党に対して、今後日医は是々非々でのぞむ。参議院選挙に西島英利議員が自民党から出馬するが、医師会の代表として応援する。自民党だから応援するわけではない。与野党共に良好な関係を築く。与党、野党問わずに我々が考える社会保障の理念、医療制度のあり方に理解を示すところは応援したい。 高齢者が生活していくには、医療と介護の両輪が欠かせない。それは病院、施設、在宅どこでも同じだ。老健のように医療面もすべて介護保険でカバーするのは問題。逆の場合もあるだろう。特に介護現場における医療は特殊な問題であり、医療保険と介護保険が併給できるようにしておかなければならない。 マスメディアも注目する介護職員における一部の医療行為は、法的に医療行為のまま残しておいては無理だ。研修を積んだ介護職員にも認めるのであれば、医療行為からはずすべき 2012年はダブル改定の年。かなり大幅な改定となるだろう。医師会としては介護療養型施設を存続させるか、医療療養病床の点数の大幅な引き上げを求めたい。民主党は療養病床は38万床残す方針だが、今の医療療養病床は1日1ベッドあたり3000円、年間1億円の赤字という現状。このままでは経営的にみて残れない。 保険料の財源は税金で徴収しようと保険料で徴収しようと、国民負担という意味では同じ。社会保障を全体として支えるためには全員が公平に負担する必要がある。 今以上の保険の充実を国民が望むなら、所得の補足を必要とせず広く浅く負担する消費税の引き上げは将来的にはやむをえないだろう。低負担、高福祉という制度はありえない。ただ消費そのものが落ち込んだときの対策は必要だ。大企業も社会の一員として応分の負担をしてもらいたい。 日本介護支援専門員協会 木村隆次会長 財源は広く社会保障を支えるという視点を 民主党政権の誕生はプラスに考えたい。昨年長妻大臣と話をする機会があり「ケアマネジャーは苦労しながら良い仕事をしている。経営が大変だと聞いており、よい仕事をしているところはきちんと評価したい」という旨の話をいただいた。政権に対しては35人の持ち件数で十分に経営できるよう提言したいと思っている。 処遇改善交付金に関しては対象をケアマネジャーまで広げるよう、前大臣のころから強く要望してきたが、残念ながら現段階では実現に至らなかった。それではすべての介護職種の処遇改善をはかるという民主党のスタンスに反するのではないかと考える。 昨年協会独自に改定後のケアマネジャーの実態調査を行い、詳しく分析しているところだ。2012年の改定にむけ、その結果を理論的根拠とし、給付費分科会など公の場で提出すことなどで、現場のケアマネジャーの頑張りと共に我々の主張を訴えていきたい。民主党政権とのパイプもあるが、今の段階ではどのように政策が決定されているのか判然としない面がある。 民主党は療養病床廃止凍結を打ち出しているが、それは現状を認めるだけで在宅重視という流れは大きく変らないだろうとと見ている。また施設を3倍のスピードで整備していくのなら、負担料アップに直結する話。財源やシュミレーションをきちんと国民に示してほしい。 高齢者の生活支援を介護保険で全てカバーするには明らかに無理がある。住まい、家族、隣人など高齢者が置かれている環境は一人ひとりすべて違う。これからは自助、共助、公助を組み合わせたマネジメントこそがプロであるケアマネジャーには求められるだろう。団塊の世代が高齢化していくためなおさらだ。政権が変ったからではなく、真の意味で自立支援を促すマネジメントの理想像を提案していくつもりだ。 介護保険の財源に関しては、消費税を引き上げなければならないだろう。同時に20歳以上からの保険料徴収も検討すべき時期にきているのではないだろうか。介護保険だから、医療保険だから、年金だからと制度を個別に考えず、広く社会保障全体を支えていくという視野が求められよう。今後サービスを受ける人が急増することは疑う余地がないところ。広く薄く集め、国民全員で支えるという仕組みが必要だと考えている。 日本介護福祉士会 石橋真二会長 本体報酬で4万円の賃金確保を 自民党政権下、社会保障費の削減によって、給料が上がらない、ボーナスが下がったなど、給付削減の影響をまともに受けたのが現場の職員だった。民主党政権になって政府の方針が転換され、サービスの向上をめざして介護職員賃金4万円アップがマニフェストに盛り込まれ、介護職の処遇改善に期待がもてる。 そのための財源確保は大きな課題で、正直不安がある。介護給付費は税と保険料が半々で負担するが、消費税率アップなど安定財源の確保をが欠かせない。できれば税のウェイトを増やすことも必要だろう。 2015年の改定頃には、被保険者を現在の40歳から若年層まで拡げることを視野に入れるべきだろう。障害者自立支援法の関わりは課題になるが、介護福祉士の2割近くは障がい者施設で働いており、高齢者、障がい者双方での政策の動向に注目しなければならない。 09年度改定の影響については、3%報酬アップになり、人材確保の観点から介護福祉士が初めて報酬上評価されたことは良かったと言える。処遇改善への反映は、国同様に福祉士会も実態調査中で12月末締切で3月頃まとまる予定。次回改定の資料としたい。 処遇改善交付金は申請すべきである。他職種が対象にならないことから申請を躊躇する事業所があるが、申請しなければ困っていないことになる。そのためにも関係職種にも対象を広げてほしい。 4万円賃金引上げは本体報酬アップで安定的に対応してほしい。まずは交付金が終わる2年半後の対応として、交付金の1.5万円を次の報酬改定への盛込みを要望したい。ホームページなどでの人件費率の公開など処遇改善に反映する仕組みの検討も必要だ。 キャリアアップの点では、介護福祉士会がすすめるファーストステップ研修など、資格や研修の修了によって加算の設定も必要だろう。サービス提供体制強化加算などの単位アップも求めたい。 介護職の医療的行為は、一定の法的整備をした上で家族ができるものは医療行為から外して、しっかり研修を受けた介護福祉士が行える形が望ましい。介護職が医療分野に入るというより、介護福祉士のできる範囲を増やすという考えが求められるのではないだろうか。同時に報酬上の加算が必要だ。介護福祉士養成の3年化などの課題とも関わる重要なテーマといえるだろう。 日本看護協会 齋藤訓子常任理事 制度をスリム化し、訪問看護のニーズに応えていく 民主党政権ではマニフェストを見る限り、社会保障政策は前政権に比べ前進するだろう。特に医療費の底上げを唱えている点は大きく期待したいところだ。現段階では医療を具体的にどのような体制で提供するのか全体像が見えないところもあるが、民主党政権が医療や福祉の受益者や日本の医療・介護を支える看護職にとってプラスになるよう期待しているし、提案もしたいと思う。 マニフェストでは看護師増員が明記されている。人口が減少する中、現在保健師、助産師、看護師、准看護師合わせて年間6万人の供給体制をどう維持するのだろうか。財源が逼迫していることは周知の事実。保険料のアップや患者負担の増加が難しい中、民主党は本腰を入れて財源を議論しなければならない。 昨年4月の介護報酬改定で、看護職員による相談・支援サービス「居宅療養管理指導」が認められた。介護の重度化を予防するという観点からその意義は非常に大きいし、本会が力を入れて要望してきた事項。しかし残念なことにこの新しい制度は普及が遅れている。居宅療養管理指導の届出を行った訪問看護ステーションは全体の3割程度。ケアマネジャーの認知も低いようだ。 届出の仕組みが非常に煩雑で、単位数が低いこともあり、インセンティブが働かないようだ。次回の改定を待たずに届出手続きの簡素化を厚生労働省と交渉していきたい。日本介護支援専門員協会と連携を深め、訪問看護師とケアマネジャーの間で顔の見える関係づくりをしていくことも推進には欠かせないだろう。 収入の7割を介護保険に依存する訪問看護ステーションの運営は、大きな課題だ。在宅患者が重度化する中、訪問看護の重要性はますます高まる。急性期病院からの退院患者などが円滑に在宅療養に移れるよう、訪問看護師が患者宅を訪れ、訪問看護の導入や必要性の判断を担える制度を目指す。 また訪問看護も制度が複雑すぎるため、そのスリム化も改定をにらんではかりたい。ステーションの経営は管理者の能力に大きく左右されることが多く、マネジメント力の強化に向けても具体的な対策を打ち出していく。 特養における経管栄養の管理と口腔内の痰の吸引といった医療行為を介護職員が行うことに関しては、協会として見解は出していない。仮に医行為から除外となっても施設における安全管理体制をどう図るのか、入所者の状態によっては医行為になりえるので、その判断は医師または看護師に委ねるべきだ。そのテーマも含め特養におけるケアの問題に関しては12年の改定にあわせ、政策提言を協会として行う。 日本社会福祉士会 山村睦会長 少数意見を代弁し、政治に訴えていく 民主党政権への移行は現在評価できる段階にない。確かに社会保障を充実させるという民主党のマニフェストが実現されれば自民党に比べ前進だ。社会福祉士の業務は文科省、法務省、厚労省などいくつもの省にまたがっており、縦割り行政の問題もよく経験するところ。その打破という主張も好ましいといえよう。 政権が変ろうとも社会福祉制度の必要性、充実は不変。ソーシャルワークシステムを担う人材である社会福祉士を公的制度にきちんと配置してもらうよう民主党に期待したいし、全ての党派にも訴えたい。民主主義では多数決の原理が優先されがちだ。だからといって少数の弱者を放置してはいけない。少数派の意見を代弁し、それを政治に強く訴えていくことも社会福祉士会の存在意義である。 介護職員の処遇改善では介護保険の分野で社会福祉士は対象とならなかった。社会福祉士の給与も決して高くはない。「社会福祉士及び介護福祉士法」という一体的な法律があることからも社会福祉士も処遇改善交付金の対象とすべきだ。 社会福祉士は現在は地域包括のみだけ配置基準となっている。しかし社会福祉士が活躍する場面は医療、介護、障害、社協、行政など実に幅広く、それぞれの職場で配置が条件となるよう会として努力していくつもりだ。そうなることが現場職員の励みにもなる。もちろんそのためには社会福祉士としての力量が問われる。協会としては2012年に専門社会福祉士制度のスタートを予定するなど、能力のアップにも全力投球していく。 社会福祉士の業務内容、存在が国民に十分に伝わっていないとの指摘がある。社会福祉士の重要性が同僚、職場で認めてもらえていないという不満すら聞く。現場で直接介護に関わる職員は利用者の目に見えるが、相談業務という社会福祉士の能力存在を認識してもらうには、やはり配置基準を獲得していくことでではないだろうか。 我々の主張を政治や行政に訴え実現させるには、数の力は無視できない。社会福祉士の登録者数は12万人。会の会員数は3万人で組織率は25%。それを13年度までに50%まで高めたい。入会にはメリットが必要。、そのために倫理綱領の確立はもとより、会員同士のネットワークの重要性やスキルアップがはかれることなどを訴えていく。 |
情報提供:平成22年1月10日発行 シルバー産業新聞