政権に期待 社会保障充実元年に
昨年戦後初の政権交代を経験した日本。介護、医療に携わる団体は民主党政権誕生をどう受け止め、何を主張していくのだろうか。有力団体に聞いてみると全団体がマニフェストに掲げられた「社会保障の充実」にはもろ手を挙げて賛成。その財源として消費税を充てるべきとの主張も出た。前政権が打ち出した職員の処遇改善交付金の継続は歓迎されているが、対象外の職種の団体からは批判の意見も。次期改定に向けては、多くの団体が前回の改定をアンケート等できちんと検証し、今年から準備に入りたいとした。 マニフェスト 当然とはいえ、有力各団体とも「社会保障の充実」を掲げた政権公約への評価は高く、期待の声は大きい。「小泉政権下で長く続けられた医療費などの社会保障費の削減を、民主党は国の役割として重視している」(日本医師会三上裕司常任理事)。「社会保障政策は前政権に比べ前進するだろう。 特に医療費の底上げには大きく期待したい」(日本看護協会齋藤訓子常任理事)などがその代表的な意見だ。 省庁の垣根を取り払うという主張も歓迎されている。「縦割り行政の弊害もよく経験するところ。その打破は好ましい」(日本社会福祉士会山村睦会長)。 ただ、方策全体が見えてこないと指摘する声もある。「マニフェストには看護職員増員が明記されているが、供給体制はどう維持するのだろうか」(看護協会齋藤氏)。 社会保障の充実には何よりそのための財源が欠かせない。「無駄の削減」という民主党の主張は具体性に欠けるという感想が多く、4年間は消費税を上げずに社会保障の充実が可能なのか危ぶむ声は少なくない。むしろ財源は消費税で補うべきだという積極的な意を述べた団体首脳もいる。 日本介護支援専門員協会の木村隆次会長は「介護保険の財源に関しては消費税を引き上げなければならないだろう。20歳以上からの保険料徴収も検討すべき」と語り、広く社会保障全体を支えていく視野を求めた。 医師会の三上氏も「今以上の保険の充実を国民が望むなら、消費税の引き上げは将来的にはやむをえないだろう」と考えている。 介護職の処遇改善 政権が変っても、2年半にわたる職員処遇改善交付金が引き続き実施される。そればかりか長妻昭厚労相が「申請率100%」を訴えたことに意を強くしているようだ。 日本介護福祉士会の石橋真二会長は「交付金は申請しなければ困っていないことになる」ときっぱり。全国老人福祉施設協会の中田清会長も「(交付金が支給される)2年半の間に経営戦略をきちんと見直さなければならない」と交付金を人材の確保と定着の契機とと考える。 交付金の対象外となった業種からは批判の声が出てきた。「前大臣の頃から(ケアマネジャーを対象とするよう)強く訴えたが、実現しなかった。すべての介護職員の処遇改善というスタンスに反する」(介護支援専門員協会木村氏)「社会福祉士法及び介護福祉士法という一体的な法律があることから、全ての社会福祉士を対象にすべきだ」(社会福祉士会山村氏)。 ただ次回改定で介護職員の処遇改善を本体報酬のアップで図るべきだという主張は各団体概ね共通している。「政権公約の4万円の賃金引上げは、本体報酬アップで安定的に対応してほしい」(介護福祉士会石橋氏)というのが代表的意見。 「本来は介護報酬全体を引き上げ、職員の処遇改善にあてるかどうかは事業者の裁量」(医師会三上氏)「次の改定では交付金の分を介護報酬に組み込んでもらう。財源は公費の割合を大きくして補う」(老施協中田氏)といった主張が聞かれた。 次回改定に向けて 次回改定は診療報酬とのダブル改定。新政権で、先が見えない状態で、対応を進めなければならないだろう。 介護支援専門員協会の木村氏は「35人の持件数で十分に経営できるよう提言していきたい。民主党は療養病床廃止凍結を打ち出しているが、在宅重視という流れは変らないだろう」と今後を予測。 社会福祉士会の山村氏は「(国民に対する)存在意義を高めるために、さまざまな職場で配置基準とならなければならない」と地位向上を目指す。 医師会は「介護療養型施設を存続させるか、医療療養病床の大幅な点数引き上げ」(三上氏)がテーマ。看護協会は複雑な訪問看護の制度を簡素化し「管理者のマネジメント力の強化に向けて具体的な対策をうちだす」(齋藤氏)方針だ。 職員の資質向上にも取り組む。「認知症は周辺症状の改善例などを会員に示していく」と老施協の中田氏は施設職員教育に力を入れていく構え。介護福祉士会の石橋氏も「会が進めるファーストステップ研修など、資格や研修の修了によって加算の設定も必要だろう」と資質の向上で報酬アップを考えている。 診療報酬改定では財務省の抵抗にあいながらも、アップを打ち出した民主党。前回の介護報酬改定は自民党政権時代だが、共にプラス改定は小泉政権時代では考えられなかったこと。社会保障の充実をマニフェストに掲げた民主党にはぜひその実現を期待したい。 |
情報提供:平成22年1月10日発行 シルバー産業新聞