腰痛対策の実際~介護腰痛に悩むあなたへ① 対症療法に原因療法を加えた腰痛対策の開発 New!!
多くのひとが腰痛で困っている あなたは腰痛で困っていませんか?国民生活基礎調査によると全年代の有訴ワースト3に腰痛が入っています。また、業務上疾病の内訳(図1)をみると、なんと50.9%が腰痛です。介護の現場では、福祉事業団職員の調査結果(伊藤ら)によると、30.9%が腰痛を訴えていて、力仕事をしないようにしている人は11.5%を占めていました。つまり、仕事や日常生活に支障のある腰痛をかかえている人が多く(介護現場では10人に1人)いるわけです。 では、こんなに多くの人が困っている腰痛にどのように対処すればよいのでしょうか?特に、腰痛発生リスクの高い介護現場での腰痛対策はどのようにすればよいのでしょうか?今回は、1973年から事業所の腰痛対策を手がけてきた体験を元にできるだけ具体的な腰痛への対処法、職場での腰痛対策の実際をご紹介したいと思います。 治療から予防までの総合的対策 99年の日本腰痛研究会において、腰痛研究で著名なナッケムソン博士がゲストスピーカーとして講演されました。その中で、「Cochrane(コクラン)協同体(世界中の論文を審査する機関)の審査に合格した腰痛に関するすべての論文を検討した結果、手術・物理療法・薬物療法等の受身的治療の有効性は40%以下である。そして、治療後の再発防止も含む最も効果のある腰痛対策は、組織化された教育である」と述べられました。これは、私どもが試行錯誤しながらつくってきた腰痛対策システムに符合するものでした。 今から37年前、某清涼飲料水メーカー営業マンの5%が腰痛で働けなくなりました。この当時、清涼飲料水業界は好景気でトップ営業マンは1日に千ケース(1ケース20kg)を夜中まで運んでいたそうです。当然、腰への負担は大きくどんどん腰痛が発症しました。腰痛になった社員は、仕事を休んで痛みをとる受身的治療(これは、現在も同じ)を受けました。そして、痛みが軽くなると仕事に戻りましたが再発をくり返しました。その中には、椎間板ヘルニア等の重症の腰痛を起こす者もあり、復職できない社員が増えていきました。 相談を受けた当研究所(故市川宣恭博士を中心に)では、痛みをとる対症療法(受身的治療)だけでなく、原因療法(痛みを起こしている原因に対処する方法)をプラスした治療から予防までの総合的対策(図2)が必要であると考えました。そして、治療と予防の基準として、アメリカのハンス・クラウス博士らが考案したクラウス・ウェーバーテストを用いて脊柱機能(腹背筋力や前屈柔軟性の測定)をチェックし、強化しました。また、運動力学(現在はボディメカニクスといわれている)からみた作業姿勢の指導、日々の疲れをとるコンディショニング等を取り入れたプログラムを実践しながらつくっていきました。 その結果、腰痛社員が減少し全国の事業所がこの対策を取り入れて成果を挙げることができました。北海道コカ・コーラボトリングでは、23年間の総合的対策で500日近くあった腰痛による休業日数が0日になり、約1億2千万円の経済効果が算出されました。なお、この内容はNHK「ためしてガッテン」等のメディアでも報道されました。(つづく) (医)貴島会ダイナミックスポーツ医学研究所 副所長 土井龍雄 プロフィール 1952年長崎県生まれ。大阪教育大学保健体育学科卒。健康運動指導士、アスレチックトレーナー、JOC強化スタッフ。神戸製鋼ラグビー部や武豊騎手、格闘技の桜庭和志選手、フェンシングの太田雄貴選手などのアスリートから、102歳の高齢者まで、約1万人のリハビリやトレーニングを担当。多くの事業所や自治体の腰痛、生活習慣病、介護予防などの対策プロジェクトにも参画。著書に「無理なく、元気にキレイになる!セーフティーウォーキング」(暮らしの風ハンドブック、朝日新聞社)など。 |
情報提供:平成22年2月10日発行 シルバー産業新聞